「夜鳴きそば」と言えば、あの物悲しいチャルメラの音色の屋台のラーメンを思い浮かべるでしょうが、元は日本蕎麦からきています。
夜そば売り
江戸初期、煮売りやという商売がありました。要は火を使って煮炊きをして簡単な料理を出す所でしょう。それにはちゃんと店構えのある「店売り」と、盛り場や縁日など人の集まる所に出かける「辻売り」と、町々を行商して歩く「振り売り」というのがありました。1661年の御触書にそれらは夜商売をしてはならん、とあるそうです。これは火事の多い人家の密集地帯である江戸では考えられる事ですね。そんなことより、1661年以前からこのような商売があったという事です。
1686年の御触書ではまたしても火を持ち歩く商売は一切禁止とあるようです。しかもその煮売りの筆頭にうどんと蕎麦切があげられていて、夜屋台で売られるものの代表格になっています。この屋台の蕎麦切売りが「夜そば売り」です。
夜鷹そば・夜鳴きそば(夜啼そば)
その後、「夜そば売り」が「夜鷹そば」となるのですが、時代がはっきりしないようです。ただ、元文(1736~41年)のころより「夜鷹蕎麦切」があった。と、記されているものがあるそうですから、1700年代中期には「夜鷹そば」と呼ばれていたようです。時代劇や落語でおなじみの四角柱の台を両脇にしてそこに天秤棒を渡し、担いで移動させるあれです。夜鷹そばは基本「かけそば」です。
この「夜鷹そば」という呼び名は江戸での事です。「夜鳴きそば」は関西での呼び名だそうです。うどんの場合は「夜鳴きうどん」。
※なんで「夜鷹そば」? 「よたか・夜鷹」と言えば江戸時代の下等な街娼の事ですね。夜鷹は夜に街頭で客を呼び寄せます。夜鷹そばも夜に呼び声を上げて客寄せをします。おそらくそんな所からでしょうか。では下等な街娼をなぜ「夜鷹」と言うのか。これは「ヨタカ」という鳥が実際にいます。鷹の仲間では無いのですが、夜に活動し、夜鳴くのです。夜に活動し、夜鳴く(呼び声)ところが街娼の夜鷹と同じですね。そこからきているようです。そして夜に活動し、夜鳴く(呼び声)のは「夜鷹そば」も同じですね。ですから、街娼の夜鷹からきたのか、そのまま鳥のヨタカからきたのか、おそらく両方を意識して付けられたのではないでしょうか。
「夜鳴きそば」の「夜鳴き」もおそらく夜鳴く鳥からイメージしたのではないでしょうか。夜鳴く鳥はヨタカだけではなく、トラツグミ(鵺-ぬえ)なども鳴きますね。
この※の部分は多分に私見を交えていますので、あまり参考にはならないと思います。
<参考図書 『蕎麦年代記』 新島繁著 柴田書店>
<参考図書 『改定新版 蕎麦辞典』 植原路郎著 中村綾子改定編集 東京堂出版>
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